小児リハビリテーションとカウンセリング

ごあいさつ

はじめに

 2022 年より小児科小児外科の開設と共に、小児リハビリテーションとカウンセリングを加えて、小児医療として総合的な診療体制を整えました。
 リハビリテーションとは本来は「社会的権利、資格、名誉の回復」という意味です。1982 年の国連定義によると「身体的、精神的、かつまた社会的に(その人に)最も適した機能水準の達成を可能とすることによって、各個人が自らの人生を変革していくための手段を提供していくことを目指し、かつ時間を限定したプロセスである。」とされています。これは当然ながら小児にも当ては まることです。日本小児科学会が提唱する「医療における子ども憲章」では「人として大切にされ、自分らしく生きる権利」を1番に掲げています。
 このような子どもの権利を念頭に置いて小児リハビリテーションを考えた時、日本におけるリハビリテーションの理念(身体障害者福祉審議会答申 1982年)からも言葉を借りれば、「小児も一人の人間として、その人格の尊厳性をもつ存在であり、その年齢、状態に応じた身体的、精神的、社会的に適した機能水準の達成を目指すことは、小児に主体性や自立性を与えることになり、さら にその自立は社会全体の発展に寄与するものである」と言うことができると思います。
 「子どもは小さな大人ではない」というルソーの言葉(エミール、または教育について 1762 年)は小児医療に携わるうえで必ず耳にする言葉ですが、この言葉を至言として、「子ども時代という固有の限定された時期に、リハビリテーションやカウンセリングによる適切なプロセスをもって、身体面、精神面ともに社会生活に適応できる状態に子どもたちを回復させること」を目指していきたいと思います。


リハビリテーションについて

 当院では小児の言語療法を以前から行なっていましたが、2022 年からは言語療法に加え、理学療法、作業療法も始めました。言語療法を希望される方にも、診察にて必要と判断した場合は、言語療法と合わせて、理学療法や作業療法を行うことをお勧めすることもあります。

カウンセリングについて

 子どもたちも大人と同様に、時には心理的な原因で体調を崩すこともあります。私たち大人が見守っていても、必ずしも子どもたちの心が常に平穏であるとは限りません。あるいは平穏に見えていても、友達関係のトラブル、学業や部活のつらさなど、日々の生活の中で知らず知らずのうちにストレスが積み重なっていることがあります。
 これも大人と同様で、ストレスのかかる状況におちいってしまうと、身体的な症状が表に出てくることがあります。例えば腹痛は、ストレスのサインとしてよくみかける症状です。もちろん、慢性的な腹痛や下痢などの消化器症状には重大な器質的疾患が隠れていることもあります。
 そのため疑わしい消化器疾患を鑑別しつつ、子どもの置かれている状況を鑑みてカウンセリングの必要性を検討します。一方で身体のダメージや障害のため、周囲の環境に適応できずに心の調子を崩すような子どももいます。このような場合は、子どもの思いに寄り添いながら、リハビリテーションとカウンセリングを併用することも一案として対応を計画します。

 「子どもの状態、ご家族の状況に応じて柔軟に対応すること」を信条としております。お気軽にご相談ください。

小児科小児外科 坂本


 

理学療法・作業療法

 発達が遅れているお子さま、生まれながらにして病気や障害をお持ちになっているお子さまに対し、その子の持っている力を伸ばしていく、発達を支援し、二次的な障害を予防することを目指します。立位・座位、這う・歩くなど の基本動作の獲得や、姿勢を保つ、変えるなどの動作訓練などを行います。筋力の増強や装具を使った歩行訓練なども可能です。
 また、子どもにとっての学びは遊びから養われます。子どもが自発的に取り組む遊びを通していきいきと、その子らしく生活していけるように治療を展開していきます。日常生活に必要な動きや遊びの動作などを通じて、見る・触る・聞くといった感覚へアプローチしていきます。
 保護者の方や、先生方とコミュニケーションを図りながら、お子さまにとって最良の成長の促しを一緒に考えていければと思っております。

目的と治療内容

 何らかの理由で、寝返りやお座り、つかまり立ち、歩行などの発達が遅れているお子さまや、病気やケガで体に不自由のある方に対して、基本的な動作や運動の発達を促すこと、発達の遅れや、感覚の偏り遊びがひろがらない、姿勢が崩れやすい、道具が上手く使えないなど、日常生活活動に心配があるお子さまに対し治療・指導を行います。
 また、姿勢の改善や移動手段の獲得、体の変形や関節が固くならないように予防や改善、呼吸機能の維持や改善・予防を目的としたリハビリを提供していきます。
 治療としては下記のような基本方針を軸にして、一人ひとりのお子さまに合わせた治療方針を立てていきます。 
 ◇ 発達動作、活動指標(遠城寺式・乳幼児分析的発達検査)を目標に発達を促していきます。
 ◇ 生活の中で行う身の回りのことが自分でできるように治療・援助します。
 ◇ 粗大運動(協調運動)バランス反応の向上、姿勢をコントロールし、適応反応を引き出します。
 ◇ 手先や指先を上手に使えるようにします。日常生活の自立にもつながります。
 ◇ 心理社会性・情緒の安定。人に対する安心感を高め、物や人と関わる力(広義でのコミュニケーション)を育みます。
 ◇ 学習面のサポート⇒鉛筆の持ち方や運筆向上するように治療・アドバイスをします。


対象疾患

 発達性協調運動障害・運動発達遅滞・ダウン症候群などの先天性の疾患・脳性まひ・重症心身障害児・自閉スペクトラム症
 ・注意欠陥多動性障害・心身症 など
理学療法士 牛嶋

言語聴覚士

お子様の日常生活の中に、次のような気になる行動はありませんか?
 □ 「さかな」を見て、「おたかな」や「おちゃかな」など、年齢に比べて幼い印象の発音になってしまう。
 □ 言葉の数が少ないような気がする。
 □ 言葉を話そうとすると、はじめの音がつまって出てこない。
 □ ご自宅や幼稚(保育)園、学校で、落ち着いて食事を食べることや、お勉強することが難しい。
 □ 文字を読んだり、書いたりして表現することが難しい。
 □ 食べこぼしがあったり、野菜やお肉など固いものを食べたりする事を嫌う。
 □ 名前を呼んでも気づかないことが頻繁にある。
 言語聴覚療法の中では、言葉の遅れや構音障がい(=発音がうまくできない状態のこと)、コミュニケーション障がいのあるお子様に対して、言語を促すための指導や、発声・発語リハビリテーション、コミュニケーション指導、摂食リハビリテーションを行っています。また、幼稚(保育)園や小学校へ訪問し、他機関との密接な連携も図るように心がけています。


対象疾患

 言語発達障害・吃語・発達性協調運動障害・機能性構音障害 など
言語聴覚士 飯村

カウンセリング

 未就学児より 18 歳未満の方に対して医師と公認心理師がカウンセリングを 行っております。苦しい時・悩んでいる時には、患者様ご自身でもまたご家族 の方であってもどうしたらよいのかわからなくなってしまうこともあるのでは ないでしょうか。
 カウンセリングを受けるとなると何をどう話して良いかわからないと不安に 思われている方も多くいらっしゃることと思います。しかしほとんどの方が回 数を重ねるごとに自然と自由に心のうちを話せるようになっておられます。
 また一人での入室が難しいようなお子様は、お母様と一緒に入室しカウンセ リングを受けられている方もいらっしゃいます。その時々に合わせて対応させ て頂きます。
 守秘義務のもと保険診療にて対応させて頂いております。
 お気軽にご相談下さい。


対象疾患

 思春期の情緒不安定・摂食障害・胃腸障害・発達障害・運動発達遅滞・多動性障害・顔面チック・夜尿症・アレルギーによるもの
 ・心因性によるもの・小児喘息・言語障害・虐待を受けている・登校拒否 など
公認心理師 萩原

十善病院へのお問い合わせ