Treatment
糖尿病網膜症は、失明原因の第2位となる疾患であり、この危険を避けるため早期発見・治療が必要です。 糖尿病と診断されたら必ず眼底検査を受けましょう。
(糖尿病専門医より)
網膜とは、眼の奥にある薄い膜で、カメラに例えると、フィルムにあたる部分です。
眼の中は、硝子体(しょうしたい)という、卵の白身のような透明なゲル状の物質で満たされています。硝子体はもともと網膜と癒着していますが、加齢により、硝子体が液化して水の成分が多くなり、網膜からはがれてきます。この時、癒着が強い部分や、もともと網膜に弱い部分がある場合、網膜が引っ張られ、裂孔が生じるのです(=網膜裂孔)。
放置すれば、硝子体の水の成分が、裂孔を通って網膜の下に入り込み、網膜を浮かせ、網膜剥離をおこします。
網膜裂孔では、黒い点やゴミのようなものが見える飛蚊症や、目の中でピカピカ光が見える光視症などの症状が出ることがあります。また、網膜剥離になると、視力低下や、部分的に見えないところがある視野欠損などの症状が出ることがあります。しかし、このような病気がおこっても症状が全く出ないことも少なくありません。
また、若い人でも、ケガやスポーツなどの外傷で、網膜裂孔や網膜剥離がおこることがあります。
網膜裂孔のみで、網膜剥離をおこしていなければ、レーザー治療を行います。レーザーで裂孔の周りを焼き付けて、硝子体の水の成分が網膜の下に入り込まないようにします。
網膜剥離に対しては、手術が必要になります。手術の方法は様々ですが、網膜の下に入り込んだ水の成分を除去し、網膜を元に戻し(復位)裂孔をふさぐというものです。
何らかの原因で視神経が障害され、視野が狭くなったり、視力が低下する病気です。
失明原因の第1位の病気であり、日本では40歳以上の5%の方(20人に1人)が罹患しています。そのうちの約7割の人は未治療の状態です。
眼圧(目の内圧)が高くなり、血液循環が悪くなることが、主な原因の一つとされています。
眼の形状は、房水(ぼうすい)という液体が毛様体(もうようたい)というところで作られ、隅角(ぐうかく)にある排出口から眼の外に流れていくという循環によって保たれています。何らかの原因で、排出口からの流出が悪くなると、房水が眼の中に貯まりすぎて眼圧が高くなります。
急性の緑内障発作では、急激に眼圧が上昇し、目の痛みや頭痛、吐き気など激しい症状がおこります。このような場合はすぐに治療をする必要があります。
しかし、緑内障患者さんの多くは、自覚症状がほとんどなく、発見された時には、視神経が障害され、視野が狭くなっていたということも少なくありません。
緑内障は、40歳以上の5%、20人に1人と予想以上に多い病気です。またそのうちの6割は、眼圧が正常(10~21mmHg)な正常眼圧緑内障と言われ、眼底検査や視野検査で初めて発見されることがあります。
障害された視神経や失った視野は元に戻すことが出来ません。最も重要なことは、早期発見早期治療です。定期的に眼科を受診するよう心がけましょう。
眼圧を下げることが一番有効であるとされています。
まず、点眼薬から開始します。緑内障の点眼薬には副作用のあるものもあります。使用回数や量など、きちんと守るようにしましょう。眼圧のコントロールが出来なければ、レーザー治療や手術を行うことがあります。
これらの治療は、眼圧を下げ、進行を食い止めるためのもので、視野や視力の回復を目指すものではありません。
水晶体(すいしょうたい)という、目の中のレンズにあたる部分が濁る病気です。
視力低下や、明るい所に出ると眩しいといった症状が出たり、眼鏡がどうしても合わないということで気付かれることがあります。
最も多いのは加齢による白内障で、60歳代で70%、70歳代で90%、80歳以上では、ほぼ100%に白内障がみられます。
また、糖尿病やアトピー性皮膚炎などの全身疾患や、ケガや放射線照射、ステロイド薬などの副作用が原因で、若いうちから発症することがあります。また、生まれつき、白内障になっているケースもあります。
混濁した水晶体を透明にすることは出来ません。進行した白内障の場合は、手術で濁った水晶体を除去し、眼内レンズを挿入します。基本的には、眼内レンズを取り替えることはありません。
軽度の白内障の場合は、進行を少しでも遅らせるために、点眼薬や内服薬を使用します。しかし、これらの薬によって、混濁が取れたり、症状が改善するものではありません。
増殖型の糖尿病網膜症では、網膜の広範囲に虚血性の変化がおこり、その部位の酸素不足を補おうとして、新生血管(しんせいけっかん)が発生します。この新生血管は脆くて切れやすく、目の中に大きな出血(硝子体出血、しょうしたいしゅっけつ)や、網膜の前面に索状物を形成し、網膜剥離を引き起こしたり、治療が困難な重篤な緑内障をひきおこしたりします。
網膜光凝固術では、網膜の虚血部位へレーザーを照射し、焼き付けることによって、酸素の必要量を減らし、新生血管の発生や増加を防ぎます。また、網膜の血管から漏れ出た水分による浮腫の部位にレーザーを照射して、瘢痕化とともに浮腫を軽減させる場合もあります。
ただし、レーザーは、黄斑部(おうはんぶ)という物を見る中心付近には照射することが出来ません。黄斑部に出血や浮腫などがある場合は、視力が低下します。その場合は抗VEGF療法の適応となります。
網膜の裂孔から、硝子体の水の成分が入り込んで網膜剥離になるのを防ぐために、裂孔の周囲を二重三重と取り囲むようにレーザーを照射します。レーザーが瘢痕化すると、裂孔の周りを鋲止めしたような状態となり、水の成分が入り込むのを防ぐことが出来ます。レーザーが瘢痕化するまでの2~3週間は、安静が必要です。瘢痕化する前に水の成分が入り込むと、網膜剥離になることがあります。
レーザー虹彩(こうさい)切開術
レーザーで、虹彩(茶目)に孔を開けて、目の中の房水の新たな流れを作り、房水が目の中に貯まりすぎないようにします。
急性緑内障の発作時や、もともと隅角が狭い人(狭隅角、閉塞隅角)が、緑内障の発作をおこすのを予防するために施行されます。
レーザー線維柱帯(せんいちゅうたい)形成術
目詰まりなどをおこした線維柱帯(房水の排出口)にレーザーを照射して、房水の排出を促進させる治療です。
いずれのレーザー治療も、外来で短時間で行うことが出来ます。